秋桜が見頃だ。身を寄せ合って咲くからこそ、美しさが際立つ。時に人も同じだ。
「ご希望のエリアに、まとまった広さの土地が見つかりました!」と銀行から話があった。
新型コロナウィルスによって世界中が大混乱であり、誰もが、何もかもが見通せないピークの頃だ。
しかし、迷わず購入した。
あれから約2年…
何もなかった土地に施設をつくった。
何もなかった壁に絵を掛けた。
何もなかった空間に本を並べた。
暮らしの中で役割を失った方々に仕事を提案した。
コンセプトはこれだ。
絵を眺めて「この色いいですね。」と微笑む方がいる。
本を手に取り「このシリーズはすべて読んだことあります。懐かしいわ。」と回顧される方がいる。
「私にできるかしら?」と照れながら、職人のような仕事を披露してくださる方がいる。
先週のプレオープンで見学に来られた際の利用者さんのシーンだ。
グループホームとは【認知症対応型共同生活介護】だが、認知症だからこのコンセプトにしたわけではない。人にとっての良い暮らしとは何かを考えた結果だ。
認知症になりたい人はいない。ただ、認知症はその人のすべてを奪い、覆い隠すような病気ではない。
日々の不安や辛い記憶を消すための「脳の進化」だという科学者もいる。書籍でそれを読んだ時に、そのページを折り、線を引き、付箋を貼ったぐらい納得した。
「認知症高齢者」という言葉をなくす。
「施設に入る」という言葉をなくす。
「介護をなくす」それが私たちの仕事だ。
36名のストーリーがここではじまる。