2025.05.28あらたか

【hanare伊丹】一杯のラーメンから、もう一度

Mさまは御年94歳。お一人で、好きな時に好きな場所へ出かけ、好きなものを食べ、夕方には近所の銭湯へ行き、帰宅後の晩酌が楽しむ――そんな毎日を過ごしておられました。
日常が一変したのは、ある冬の日のこと。外出先でついうっかり転倒し、骨折。手術をすることになりました。無事に手術は終えたものの、退院後しばらくは一人暮らしが難しいとの判断から、「hanare伊丹(小規模多機能型居宅介護)」にて連泊されることになりました。
骨折の痛みは除々に和らいできたものの、これまでの自由な生活からの変化はMさまの心に大きな負担となりました。食が細くなり、骨折部の痛み以外にも身体の不調を訴えることが増えていきます。そして新たな病気も見つかり、今年二度目となる手術が決まりました。幸いにも大事には至らず、1か月ほどで退院の目処が立ちました。

「本当は家に帰りたい。でも、今の身体で家に帰っても困るのは自分。前のような暮らしには戻れない……」
そう話されたMさまは退院後もhanareでの生活を選び、帰宅できない寂しさを抱えながらも、ここでの暮らしに馴染んでこられたのです。そのお気持ちが伝わるからこそ、スタッフ一同「毎日を少しでも楽しく過ごして欲しい」と、日々心を寄せていました。

そんなある日、食が細くなっていたMさまの一言に、私たちは沸きました。
「ここに泊まってる間に、あのラーメン屋に行きたいねん」
Mさまは、生まれも育ちもhanareの地域。「わたし、この辺の地主やねん」と冗談を仰るほど、この街をよくご存じです。『あのラーメン屋』も、そんな馴染み深い場所のひとつ。新しい店ができるとすぐに足を運んでいたという食通のMさまにとって思い入れのあるお店でした。

「ここに泊まってる間に」というその言葉には、「気心の知れたhanareのスタッフと一緒に出掛けたい」という思いが込められていました。その気持が何よりうれしくて、私たちはすぐに『あのラーメン屋』に連絡をとり、実現に向けて動きました。

当日、夢中になってラーメンを食べるMさまの姿。そして、二カッと笑って仰った「美味しかったけど、それ以上に楽しかったなあ!!」の一言は忘れられません。
少しずつ、自宅での生活に向けてMさまは歩み進めておられます。
「泊まってる間じゃなくても、家に帰ってからでも、また一緒に行こうね」それが、私たちとの新たな約束です。ご自宅へ戻られたあとも形を変えながら、私たちhanareの支援とこのご縁は続いていきます。