2024.09.17あらたか

歌に誘われて「第3回hanare宝塚夏祭り」

お盆も過ぎた残暑厳しい8月の終わり、「hanare宝塚(小規模多機能型居宅介護)」では、3回目の夏祭りを開催しました。今年は、ハーモニカ演奏をしてくださる「歌楽多笑一座(がらくたしょういちざ)」様にお越しいただき、懐かしい昭和歌謡をメインにした音楽の溢れる夏祭りとなりました。
一言でハーモニカと言っても、メロディーを奏でるハーモニカだけでなく、低音を担う大きなバスハーモニカや和音だけを鳴らすコードハーモニカなど、スタッフも初めて見る種類があり、利用者の皆さまも演奏が始まる前からワクワクされているのが伝わってきました。

最初の歌は「みかんの花咲く丘」。hanare宝塚でも度々歌われている馴染みの曲です。ハーモニカのアンサンブルに合わせて、皆さまが声を揃えて歌いました。続いて「青い山脈」や「津軽海峡冬景色」などの懐かしい昭和歌謡が披露され、「この曲好きなの」「歌っていい?」と次々に歌声が響き渡りました。

そのような中、スタッフの一人が驚いたように声を上げました。疾患により感情表現が少ないSさまが、やわらかな表情でハーモニカの演奏を聴いておられたのです。目じりは優しく下がり、口元には微かな笑み。穏やかな姿に、何人ものスタッフが思わず駆け寄りました。Sさまは駆け寄ったスタッフの手を握ぎりながら、ハーモニカの温かい音色にゆっくりと耳を傾けておられました。

1時間にみたない演奏でしたが、Sさまをはじめ、多くの利用者さまが普段とは違う表情を見せてくださいました。「父がよくハーモニカを吹いてくれてね」と懐かしそうに語る方や、身体が不自由な中でもリズムをとられる方、ご利用者さま一人ひとりがそれぞれの形で歌に心を動かされていました。それはまさに、たくさんの宝物がつまった「がらくた箱」。「歌で楽しみ、笑顔を多く」まさに「歌楽多笑一座」様のお名前にふさわしいすてきな時間を過ごすことができました。

演目の最後は、津軽三味線を弾くスタッフも加わっての「炭坑節」です。この2か月間、夏祭りに向けて毎日踊ってきたご利用者さまたち。その努力が発揮され、津軽三味線とハーモニカのアンサンブルに乗せて皆さまはのびのびと踊っておられました。特に、学生時代に教授と共に各地の民謡を採取した経験のあるIさまは、盆踊に格別の想いをお持ちだったのかもしれません。練習中は席に座って静かに体を揺らしていたIさまは、演奏が始まってしばらくすると、自然と立ち上がり、メロディーに合わせて踊り始めました。半身に麻痺があることを感じさせない堂々とした踊りに、私たちスタッフも感動しました。一曲をおどりきったIさまは晴れやかな笑顔で席に戻られ、その姿は歌楽多笑一座の皆さまの心も大きく揺さぶったことでしょう。
 
ひと月かけてご利用者さま一人ひとりがお花紙をまるめて作りあげた提灯の壁絵には、Iさまが過去に旅先でみた盆踊りついて詠んだ句が飾られています。
――「白みゆく 街を扇子が 踊りゆく」