2024.07.26あらたか
遮光カーテンに遮られ陽の光が差し込まないフロア、少し光度を下げた照明に照らされたテーブルには色鮮やかなカクテル。昭和の香り漂うデュエットソングが流れる中、グラスの中の氷がカラリと音を立てる。ここはまさに昭和のスナック――をイメージしたhanare宝塚(小規模多機能型居宅介護)のフロアです。
まだ梅雨が明ける前の6月、hanare宝塚ではカラオケスナックイベントを開催しました。「カラオケスナック」というコンセプトにふさわしく、カウンターに一列に座ったご利用者さまと肩肘の張らない自然な時間を楽しむことができました。
ママとバーテンダーのアドリブの効いた掛け合いもにぎやかで、ご利用者さまも思わずマイクを握る手に力が入ります。流しの三味線やギターも登場。普段は物静かなIさまも三味線の音色に合わせて朗々と黒田節をうたわれ、ベッドで臥床することが多いSさまもじっと耳を傾けておられました。
大好きな童謡を誰よりも声を伸ばしてうたわれる方もおり、明るい歌声が響きます。カシスオレンジをイメージしたカクテル風ゼリーは「きれいねぇ」と好評でした。スタッフもご利用者さまも一緒になって「乾杯」の声を張り上げました。
そんなスナックの雰囲気を誰よりも楽しんでいたのはKさまだったかもしれません。普段は明るく元気なKさまですが、このところ少し気分が落ち込むことがありました。それでも大好きな「津軽海峡冬景色」を熱唱し、みんなから拍手をもらうと、いつもの笑顔が戻りました。冗談を言いながらカウンター越しに飲みものを手に取る姿は、まさにご常連のお客様のよう。「次はこれ歌おう」「これならみんなも知ってるやろ」とリクエストもばっちりで、場を盛り上げてくださいました。
三味線とギターの即席コラボで全員いっしょに「ふるさと」を歌い終わったときには、スタッフとご利用者さまというよりもまるで「飲み仲間」のような絆が生まれていました。
いつものゆったりとしたhanareの時間が戻ってきたとき、Kさまは肩の力が抜けたようにふっと笑いながら仰いました。
――今日はありがとう。楽しかった。明日も元気に来ます。
日々を重ねるなかでは楽しいことはもちろん、落ち込むこともあるでしょう。それでも悲しいできごとがあっても、またきっと元気になれる、そんなきっかけとなるような瞬間をhanare宝塚でも作っていきたいと思っています。