2024.01.09あらたか
昨年末の話になりますが、12月22日、「hanare宝塚(小規模多機能型居宅介護)」ではクリスマス会を開催しました。
現在のようなクリスマスケーキやプレゼントが日本で一般的になったのは、一説によれば1960年代、高度成長期の頃といわれています。hanare宝塚のご利用者さまの多くは、そのころ30歳前後の方々でしょうか。家族や子供と一緒にクリスマスを過ごした方も多いようです。そのためか、大きなクリスマスツリーが飾られ、フロアのあちこちにサンタクロースやクリスマスのオーナメントが登場する12月に入ると、皆さん、なんだかそわそわ、わくわく。会話も弾みます。
そんな様子をいつも少し離れたところから静かにご覧になっているのがTさまでした。実はお笑いが大好きなTさまは、1対1の時はスタッフをからかって楽しむおちゃめな一面もあるのですが、疾患からくる失語症の影響のためか、いろいろな集まりにお誘いしてもいつも遠慮され、遠くから眺めていることが多いのでした。
ご家族の話ではお元気な頃は、話の中心になることは好まないけれども、地元の集まりには欠かさず参加されていたとのこと。もともとはにぎやかな集まりが好きな方のようなのです。本心を伝えづらいTさまの笑った顔がみたいとあれやこれやする私たちを前に、Tさまは相変わらず困ったように眉をさげるのでした。
今年のクリスマス会はhanare宝塚らしく、手作りあふれるアットホームな催しとなりました。サンタさんといっしょにいつもの体操を行い、クリスマスにちなんだ「○×クイズやビンゴ」ではスタッフの名司会により盛り上がり、にぎやかに時間は過ぎていきました。その中で、ひとつ私たちが気にかけていたのが、やはりTさまのことです。普段の体操でもお誘いしても見学していることが多いTさまにとって、このクリスマス会が楽しいものになっているのか――。しかし私たちの心配は杞憂でした。サンタの帽子をかぶったTさまは他のご利用者さまと一緒になって腕をしっかり動かし体操をされ、○×の札をあげたりビンゴのくじ引きをしたりと前向きに参加されていたのです。最後の歌のときには、『きよしこの夜』を小さく口ずさんでいらっしゃいました。そして冗談を重ねたスタッフの閉会の言葉には噴き出して笑うほどでした。Tさまのその自然な笑顔は私たちにとって何よりのクリスマスプレゼントとなったのです。
豪華なケーキも派手な演出もないかもしれません。けれども一人ひとりに笑顔があふれ、おだやかな温かいひと時をともに過ごすことができました。
クリスマスの一日、hanare宝塚はやさしい笑顔に包まれていました。