2023.12.07GOALZ

死ぬまでに一度は見たい「沙羅双樹」

週に4日、「ARC甲南山手(通所介護)」をご利用されているIさま。普段お話しをする中で、よく会話に出てくるのが「昔は色々なところに行ったわ」というフレーズ。
元々は旅行が大好きだったそうですが、コロナの影響で外出機会が減り、最近では旅行に対する関心が薄れてきたとのことでした。ただその中でも心残りなのは、若い頃に読まれた平家物語の冒頭に無常の象徴として記された「娑羅双樹(さらそうじゅ)」の花を見られなかったことだとおっしゃられていました。娑羅双樹の花はどんな色なのか、どんな香りがするのか。本を読みながら色々と想像を膨らませていたけど見ることができていない。一度は自分の目で確かめてみたいと......。

娑羅双樹は本来4月が見頃とされていますが、それまでに今の自分がどこまで行けるのか試してみたい、できればGOALZを利用して見に行ってみたいとのこと。そのためには、今のIさまの体力や状態を知り、日々のリハビリのメニューなどを調整する必要が出てきます。そして今回、娑羅双樹がみられる有馬温泉の中心にある「念仏寺」に行ってみることになりました。

当日は悪天候の予報でしたが、Iさまの願いが通じたのか、上着を着ていると少し暑く感じるほどの晴天に恵まれました。念仏寺の周辺は坂道が多いこともあり、Iさま自身は「坂道を歩けるかわからない」と不安に思われていたようですが、いざ到着すると、その不安はなんだったのかと思わせるほど、軽やかな足で坂道をのぼり降りされていました。そして念願の娑羅双樹の樹をみつけると少し考え込まれたIさま。しばらくして「やっぱり見頃の時期に来てみないとね。4月もよろしくお願いします」とおっしゃり、私たちも「ぜひ一緒に行きましょう!」と来年のGOALZをお約束させていただきました。

念仏寺を訪問後、ランチに選ばれたのは有馬温泉の「銀水荘 兆楽」です。お子さまが小さい頃、家族で訪れた思い入れのある旅館で、「せっかく有馬に行くなら」と、Iさまのご家族が予約して下さいました。最後に訪れたのは随分前のことのようで、変わった雰囲気のなかで懐かしそうに眺めておられました。また、普段は少食のIさまですが、いつもの倍の量を召し上がっていました。

GOALZを体験していただいた後、Iさまに何が一番印象的でしたか? とお聞きすると、念仏寺でも旅館でもなく“車中での会話”だと。そのお答えに少し驚きましたが、一人暮らしのIさまにとっては誰かと話すことが、とても貴重なことと気付かされました。

今回の企画は私にとって初めてのGOALZでした。当日まで無事にできるのか、満足していただけるのかと不安もありましたが、想像以上にIさまの喜びを感じることができ、やって良かったと強く感じました。これからも利用者さまの「これがしたい」を実現できるようにサポートしていきたいと思います。