2023.09.29あらたか
「敬老会」をお休みされていたYさまは、今年、米寿を迎えられました。
これまで手慣れた様子で編み棒を動かしたり、今年の春にはスタッフとの散歩でつばめの姿をにこやかに眺めておられたりしたのに、度重なる入院を経て、最近では笑顔も減り部屋で休んでいることが多くなりました。そんなYさまに、どうしたら楽しい気分で過ごしていただけるかというのが、ここ最近のスタッフたちの共通の想いでした。
昼食がひと段落したある日の午後、施設のフロアに歌声が響きます。歌が大好きな利用者さまの要望に応えて、即席の合唱部が結成されたのです。配られた歌詞を手に馴染みのある歌を歌い始めました。聞きなれないやや高い歌声にふと顔を上げると、向かいのYさまも声を出して歌っておられたのです。スタッフはその様子を見てすっと隣に座りました。歌っていたのは『みかんの花咲く丘』。横に座ったスタッフに「この歌には思い出があってね…」と話すYさまは、かつて娘さんと丘に登ってこの歌を歌ったことがあると教えてくれました。
体操が終わり、おやつの時間になると穏やかな表情を浮かべるYさま。私たちは、米寿のお祝いをサプライズでお祝いを行うことにしました。米寿を迎えたYさまに表彰状を手渡し、先日の敬老会で用意していたビンゴの景品と記念カードを贈りました。そして、Yさまの思い出の一曲『みかんの花咲く丘』をみんなで合唱です。最後には、Yさまが生まれた年に阪神タイガース(当時は大阪タイガース)が結成されたことにちなんで、タイガースの法被を着ていただいて『六甲おろし』の合唱で締めくくりました。
ちょうどこの日に面会で来られていた娘さんに話を伺うと、「『みかんの花咲く丘』は母との思い出なんです。覚えていてくれたんですね」とのこと。お互いの肩を並べて丘の上で歌った思い出は、きっとお二人の心の中にいつまでも大切に刻まれるのではないでしょうか。「本当にうれしいばっかりで」と涙ながらに挨拶をされたYさま。これからもいっしょに楽しい時間を「hanare宝塚」で過ごしていただきたいと思います。