2023.02.27GOALZ

カフェで美味しいランチを!

20歳頃、脳幹に血管異常がみられ後に脳幹部海綿状血管腫と診断されたM様。2018年になってからは右上下肢の麻痺が進みはじめ、当社のteon(訪問看護)を利用されることになられたことが私たちとの出会いです。ところがその翌年、ご主人さまが急死。それを機に周りの人たちとの交流も少なくなり、認知機能も徐々に低下されてきました。更には右上下肢をかばってきた左側に負担がかかり、歩行も不安定な状態になってきました。そのため活動量が低下し食事や体重も減少してきたことが気がかりとなり、また私自身、M様にもう一歩歩み寄り、信頼関係を築きたいという思いもありました。そこで、思い切ってGOALZを提案してみることにしました。

しかしM様は、何かに取り組むこともなく特別な趣味もお持ちではなかったため、何に興味があるのか、やりたいことは何なのか――もうまく見いだせない状態でした。娘様からは「母は何が好きなのかがわからない。とにかく提案してみてほしい」とのこと。そこで今回は「カフェで美味しいランチを食べに行く」プランをお勧めしてみました。お店においては、過去に娘様が行かれた場所で「いいやん! 行ってきたら!」とお母様の背中を押してくれたこともあり実施に繋がりました。

GOALZ当日は天候にも恵まれ、お店に入ると「素敵なお店ね、ランチが楽しみ。」と笑顔で話されていました。メニューを選ぶ時も嬉しそうで、食事が運ばれた時もこれまで見たことのない表情で喜んでおられました。食事中もいつもはあまりご自身の事を積極的に話されないM様ですが、楽しい雰囲気もあり話が弾んでいました。帰りの車内では「ご飯美味しくて楽しかったです。外に出掛ける事も大切ですね。また機会があれば行きたいです。」と意欲的な言葉を聞くことができました。

ご家族様にも当日の事をお話させて頂き、娘様より「日頃外出が出来ていない母にとって今回の企画は大きな第一歩となったと思います。歩けるうちにやりたい事をして、車椅子に乗ってでもいいから外出してほしいです」と話されていました。

この企画をきっかけにご本人様の活動意欲の向上と、日常生活でのささやかな楽しみが見つけることができたのではないかと思います。そして私たち職員は、改めてご本人様の「やりたい」ことを引き出し、実現して差し上げる重要な役目があることを実感しました。