2023.09.14GOALZ

夫のお仏壇を海の見える我が家へ

数年前、癌を患われ抗がん剤治療により骨粗鬆症を発症し圧迫骨折などを繰り返されていたIさまは、当社の「ARC×me-boi東垂水」にて懸命にリハビリを行っています。そんな中、臨時で個別リハビリに入らせていただいたのがIさまとの出会いです。

初めてお話しするIさまはとても気さくな方で、初対面ながらいろんなお話をしてくださいました。そしてリハビリも終わりに近づくころ、「私、元々大阪に住んでいたけど、二年前に神戸で転んじゃってね。それから一度も大阪に帰ってないの。夫の仏壇もそのままになっていて、もう死ぬまでこのままやろうね…」と。

その時、“これは私たちの出番かも知れない”と思い、咄嗟に「私たちがお手伝いできると思います。お仏壇を大阪から神戸に引っ越ししませんか?」と提案してみました。
はじめは、急な話に不安そうな顔をされていましたが、「引っ越しに必要な魂抜きなどについても、私たちからお寺さんへご連絡してみます」と伝えると、目を輝かせて「それならお願いしたいわ」と仰ってくださったのです。

そして当日。
二年振りに大阪のご自宅に足を踏み入れたIさまは、懐かしそうに眺めておられました。ここには、ご夫婦の写真が沢山並べられており、お二人で過ごされた時間が詰まっていることが感じられました。そして、お寺さんにお仏壇の魂抜きの儀式をしていただいた後、私たちで大切にお仏壇を運ばせていただき、無事に神戸のご自宅にお引越しすることができました。

神戸のご自宅には、すでにお仏壇を置くスペースが確保されており、見通しは立っていなかったものの、いつか一緒に暮らせる時が来るかもしれない――というIさまの思いが強く伝わってきました。また神戸には、ご夫婦の写真が一枚もなかったようで、お二人のお気に入りのフレーム写真も持ち帰って来られました。

I さまが優しい眼差しでお仏壇を眺める姿を見て、お仏壇は単なる亡くなった方を供養するものではなく、残された家族の心のよりどころであり、お仏壇を守ることが I さまの人生の“役割”や“生きがい”になるのだと感じました。今回の GOALZ が、I さまのこれからの人生を少しでも穏やかにする一助になれば嬉しい限りです。