2023.06.28あらたか

【hanare宝塚】「喫茶はなれ」――選ぶ楽しさ

柔らかい陽の光が差し込む梅雨の晴れ間、hanare宝塚(小規模多機能型居宅介護)のフロアはいつもと違う香りに包まれていました。ご利用者さまがじっと見つめるのは、丁寧にドリップされていく一杯のコーヒー。立ち上る豊かな香りに皆さまも自然と顔がほころんでいきます。

6月16日の「和菓子の日」に合わせて、当施設では喫茶イベントを開催しました。
せっかくだからいろいろ選べると楽しいよね――というお声からコーヒーだけでなく、抹茶やココア、和菓子と洋菓子の甘味も何種類かとりそろえ、さらにはコーヒーカップもお好みのものを選んでいただけるようにしました。

「人生は選択の連続だ」いう言葉は、どこの哲学者の言葉なのか、またはテレビのCMで流れるフレーズなのかわかりませんが、私たちは日常生活で大小さまざまな選択をしています。けれども当施設をご利用いただいている方々の中には、疾患の影響で目の前のものが何であるかわからなくなったり、自分の好みや目的を理解し比較して一つを選ぶという行為が難しくなっている方もいらっしゃいます。

小花の飾りがついた角砂糖を手に取って目を細めているのは、笑顔がステキな明るいTさま。でも最近、その笑顔もみる機会が減っており、ご自宅でもご家族さまが用意される朝食のパンを見ても、どれを食べるか決めることができずに混乱してしまいます。今回の喫茶イベントでも、Tさまが楽しんでいただけるか心配していました。しかし、スタッフとゆっくり話をすることで、Tさまは「選ぶ」ことを楽しんでくださり、たくさんのメニューの中から「カフェオレ」と「抹茶のケーキ」を注文することができました。またテーブルに並べられた様々なコーヒーカップにも興味を持ち、「これもいいわね」と気に入ったコーヒーカップをご自身で選ぶことができました。それだけでなく、コーヒー豆を挽くミルをお渡しすると「私がやってあげるわよ」と張り切って何度も豆を挽いてくださいました。

宝塚でも評判な某珈琲店の店主となじみのスタッフが淹れたこだわりのコーヒーはご利用者さまにも好評で、「いつもとちがう」「おいしいね」というたくさんの声が聞こえてきました。普段は水分をなかなか摂らない方でも、このコーヒーは一気に飲まれるほどでした。
「昔、喫茶店をやっていたことを思い出したわ」など普段語られない思い出を話してくださる方や、「ロイヤルミルクティって飲んだことないからこれにするわ」と選んでくださった方など、さまざまな飲み物と甘味がテーブルに並びました。それはご利用者さま一人ひとりがご自身を表現された証です。

「この次はどんなことをしてくれるんか楽しみやわぁ」という言葉に、今回の企画がご利用者さまの明日への活力に少しでもなったのではないかと感じました。スタッフが「閉店」の挨拶をする際、はじけるような笑顔で拍手をしてくださったTさまを見て、この企画を実施して良かったと、スタッフ全員が笑顔になりました。